子育て家族から
最も愛される旅館づくりを。
旅館「扇芳閣」五代目経営者 谷口 優太さん
プロフィール
大学卒業後、海外旅行代理店などの勤務を経て
オランダへ留学。2020年から家業継承し、
「世界中の子育て家族から最も愛される旅館」を
ビジョンに掲げる。
一生モノの、一瞬を作る。
コロナ禍で見つけた新ビジョン。
2020年4月、コロナ禍が始まる時期に家業を継いだ私は、未曾有の事態に直面し、旅館の経営方針を根本から見直す必要性がありました。
あらためてこの旅館の未来、そして自分を見つめ直し、本当に成し遂げるべきことは何か。
繰り返し思い巡らせ導き出したのが、「世界中の子育て家族から最も愛される旅館」というビジョンでした。
この考えには至った理由は、二つあります。
一つは個人的な理由で、忙しく出張の多かった父親との思い出が少なく、最後の会話さえ覚えていないという経験から、家族の大切な一瞬を作るお手伝いをしたいという思いからです。もう一つは、鳥羽の高級旅館市場で差別化を図るために、3世代旅行に特化することが最適だと判断したからでした。
このビジョンに軸に、客室をはじめ、パブリックスペースや食事などを少しずつ変えていきました。
子育て家族に愛されるために、
変えたこと、変えなかったこと。
リブランディングにおいて最も重視したのは「当事者の声を聞く」こと。
3世代旅行の宿選びで中心となる親世代に焦点を当て、延べ240名以上にインタビューやアンケートを実施しました。
さらに、地域の方々だけでなく、オランダの大学院時代の同級生などに協力してもらい、国際的な視点も取り入れました。
その結果、子連れ旅行の主な課題は「食事」「睡眠」「移動」「風呂」の四つに分類されることがわかったのです。
そのため、たとえば食事では、親が子供を抱えながらでも食べられる料理スタイルなど、様々なひと工夫を施しました。
ただ、リブランディングで刷新したところはありつつ、「パーソナルコネクション」(人と人との心の繋がり)を維持することだけは守り変えないようにしました。当館では、サービスとホスピタリティを明確に意識づけし、後者の「ポスピタリティ」だけは絶対に失わないよう徹底しています。
ダムから風車へ。
鳥羽とともに生きる旅館。
鳥羽の最大のポテンシャルは「漁業と観光の距離の近さ」にあり、同時にそれを活かしきれていないことが課題です。
これからの観光地に必要なのは、単に観光客数や消費額を増やすことではなく、「地域内調達率」を高めること。
地元で獲れた海産物を地元の宿が使うことで、その恩恵が還元される持続可能な観光モデル構築こそが重要です。
また同じくして、これからの旅館の役割は、従来の団体旅行に依存したお客様を囲い込む「ダム」から、地域との人の流れを作る「風車」へと変えていくべきだと考えています。
当館もこの冬に、鳥羽水族館との協働のコンセプトルーム「ラッコブルー」と「グリーン」をオープンさせました。
これからは、この地域とより一体感を持った旅館へともっと進化していきたいと思います。
